課題曲 II 龍潭譚/佐藤信人

みなさんこんにちは!

トランペットを吹いたり、教えたりしている荻原明(おぎわらあきら)と申します。このサイトの管理者です。

 

「荻原明オフィシャルサイト」にて今年も課題曲トランペットパート解説を開催しております。

 

解説を始める前にひとつ大切なことをお伝えしますと、この記事は課題曲の解説というよりも、課題曲のトランペットパートに出てくるいくつかの部分をピックアップして、その考え方や解決方法をお伝えする内容がほとんどである、ということです。よって、作品を作り上げるための全体像…指揮者が作り上げていく方向性や作品そのものの特徴などについてはあまり言及しません。まあ、そういったことは雑誌で指揮者や作曲家の方が詳しくお話されていたり、(信憑性についてはわかりませんし責任は持てませんが)インターネットでも様々な場所で目に入ると思うのでそちらをご覧ください。

 

では課題曲Ⅱ「龍潭譚」の解説です。

 

 

作品について

この作品、15分とか20分とかあれば良かったのかも、と感じます。というのも課題曲の限られた演奏時間でいくつもの場面が現れては消えていくために、大きなピーク(軸となる部分)を持たせられることがないまま、あれやこれやと進んでしまいます。果たしてコンクールというジャンジャカ鳴らす傾向にある場面でどれほど効果的な演奏ができるのか。まるで映画のダイジェストを見ているような捉え所のない印象を逆手に取るという考え方ができるようなできないようなゴニョゴニョ…

 

 

ミュートへのこだわり

学校の部活へ指導に伺って高確率で感じることは、ミュートという器具に対しての扱いがすごい点です。

何をどうしたらそこまでベコベコになるのか、と思うくらい原型を留めていないものがあったり、そこまで酷くなくても差し込むところがヘシャゲているものがとても多い。

 

ミュートだって楽器同様、意味があってその形になっているのですから、変形したらコンセプト(音色、ピッチ、響き)だって変わってしまいます。ぜひ大切に扱ってください。状態が酷い場合は思い切って買い直しましょう。

 

この作品、冒頭いきなりストレートミュートのロングトーンから始まります。1stだけが担当しますが(1stが複数名いる場合は楽譜の指示はありませんが演奏するのは1名で良いと思います)、アンサンブルにおける音色へのこだわりを追求して欲しいと思います。同様に、96小節目には2ndが、103小節目には3rdがそれぞれカップミュートで演奏する指示があります。課題曲だからわざとパートをバラしているのかもしれませんが(面倒ですね)、それらもすべて同じようにこだわりたいものです。

 

ミュートは同じストレートであってもメーカー、素材、形状によってそのサウンドは大きく変わります。何が良いとかそういうことではなく(品質ももちろんありますが)、「この作品のこの場面で最もしっくりくるミュート」をそのつど見つけて欲しいのです。「しっくり」を判断するのは、実際にそれを演奏する奏者と指揮者です。指揮者は音楽の完成形を決定する責任者ですから、この作品の冒頭であれば、トランペットのストレートミュートと木管楽器で織りなす響きにのイメージを明確に持った上で奏者に的確な指示を与えてください。奏者も、言われるまで何もしないのではなく、自分が最も良いと思うものをチョイスした上で、どのような指示があっても対応できるようにいくつかのミュートを用意しておくのが理想です(可能な限り)。

 

最も明確な違いは素材によって生まれます。一般的に使われることが多い金属(アルミ)製と、響きの柔らかな木製で全体の印象はかなり大きく変わると思います。これはカップミュートでも同じです。ぜひいろいろ試してみてください。

 

 

 

ブレンドされたサウンドとは

よく「ブレンド」という言葉がアンサンブルで使われますが、僕は誤解を招きやすいためにこの言葉を積極的に使いません。主観ではありますが、どうしても「ブレンド」=「コーヒーにミルクを混ぜるイメージ」が拭えず、音色もそれと同じように全部が混ざり合った結果、得体の知れない何か新しいサウンドが生まれるかのような想像が働いてしまうのです。

音色のブレンドとは、それぞれの個性をなくすのではなく、むしろ逆で、ひとつひとつの楽器がバランスよく主張した結果生まれてくる響きを指します。

 

そしてこの作品、木管楽器やホルンの一部の楽器には非常に短いソロ的なメロディが出てくるのに対してトランペットは他の楽器と一緒に演奏する場面がほとんどです。こうした作品のときに間違った「ブレンド」解釈を持ち込んでしまうことが多く、注意が必要です。

 

例えば14小節目のトランペットセクションは、サックスやフルート、ユーフォニアムなどと同じうごきをしていますが、それぞれのニュアンス、方向性などは全体で統一しつつも、音色は楽器ごとに最良なものを主張することが大切です。トランペットは何があろうが当然トランペットのサウンドであり、それ以外のサウンドが出せるはずがありません。よく「音色はどうやって変えるのですか?」と質問されることがありますが、変えられません。

音色ではなくニュアンスや表現の仕方で聴く人が受ける印象を操作している、と言ったほうが正しい解釈だと思います。役者さんは表情、目つき、口調、仕草などでキャラクターを演じ分けていますよね。元々持っている声の質や顔そのものを変えているわけではありませんね。

 

 

ベルトーンについて

23,24小節間は管楽器全体のベルトーンになっています。どうでもいいことですが最近の課題曲ってやたらベルトーンがありませんか?気のせいですかね。

この手法についても名前のせいなのか演奏の仕方を勘違いしている人が多いのですが、鳴らした瞬間に聴こえないくらいfp(フォルテピアノ)をしないように注意してください。この場面の金管楽器はppからクレッシェンドをするのであまりそういったことにはならないと思うのですが、本来ベルトーンは重なり合ってだんだんと重厚なハーモニーを築き上げることに意味があるので、音を出しては消えてしまうと聴く人に対して「さて今の音でどんなハーモニーになったのでしょうか!」とクイズみたいになってしまい、負担をかけさせる結果になりますから、意味がないどころか逆効果です。ベルトーンの場面で音を抜かないよう、他のパートとのバランスを自身の耳で感じ取って演奏してください。他のパートの音が演奏している自分の耳に届いていれば、基本的にはバランスは取れています。

 

また、この場面に限ってですが、陥りそうなのがppと書いてあるために「(聴いている人が)それぞれの楽器がいつ出現したかわからないような不明瞭な演奏」になる恐れがあります。作曲者の狙いはそうではないはずですから注意しましょう。どれだけppppと書いてあっても、それは奏者の主観ではなく聴く人がそう感じる存在(ましてやダイナミクスは音量(デシベル)に限った存在ではない!)と捉えるようにしましょう。

 

 

6/8拍子について

個人レッスンで生徒さんに必ず質問するのですが、以下の譜例を吹き分ける際、どのようにすれば良いと思いますか?

パソコンで再生するとまったく同じように聴こえるこれらは、本来は当然違う存在です。演奏者というのは楽譜に書かれた情報を的確に聴く人へ伝わるために表現することが使命のひとつですから、それぞれ異なる明確な解釈があり、それを表現できることが必要です。

 

最も大きな違いは分母、要するに「基準となる音価」の違いです。

2/4拍子の場合、3連符になっていますがあくまでも「4分音符1つが3つに分けられた存在」であり、母体は4分音符です。手拍子を取った場合、1小節に2回カウントします。

一方で6/8拍子は「1小節に8分音符が6つ存在している」と解釈しますから、すべての8分音符は主役級の存在です。もちろん強拍弱拍の存在はありますが、6つあって6拍子であることに変わりありません。

 

6/8拍子にはいくつかの特徴的なリズムがあります。その中で例えばこのリズム、

3拍目と6拍目の8分音符も拍子を構成している大切な存在ですから、1拍目や3拍目と同じ存在になるよう、きちんと主張してあげましょう(音を抜かない!)。こうすることで6/8拍子らしい演奏になります。

 

何度も話題に挙げて申し訳ないのですが、やたらと音を抜くクセを持っていると6/8拍子らしさを表現することができません。そもそも音を抜く演奏というのは、非常に特例であって、演奏の基本は「持続」です。楽譜に敢えてそうした指示があるときに限り、そう表現するのですから、クセになっている方は直していきましょう。

 

この作品でも25小節目から70小節目までの間が6/8拍子なので、どのように演奏すると説得力があるか研究してください。

 

 

 

ということで、課題曲Ⅱに関してはここまでとします。この先の作品解説も今回同様、広範囲における解説文になっておりますので、「自分は課題曲Ⅱを演奏するのだからそれだけ読めば良い」のではなく、ぜひすべての作品の解説をご覧いただければ幸いです。きっと様々なヒントを得られるはずです

 

もっと具体的に知りたい!上達したい!という方はぜひレッスンにお越しください。

 

荻原明が講師を務める東京都文京区にございますプレスト音楽教室では、通常の定期レッスンはもちろんのこと、3ヶ月限定で1回から受講可能な「トライアルコース」がございます。コンクールまでの間のステップアップにご利用いただけます。

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また、部活などに出張レッスンも可能です。

 

すべてのレッスンに関してはこのサイト内にございます「Lesson」ページに詳細がありますので、ぜひご参考になさってください。


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隔週火曜日更新のブログ「ラッパの吹き方:Re」と、交互に掲載しております「技術本(テクニックぼん)」こちらもぜひご覧ください。

 

 

 

では、次回は2020年3月27日(金)に課題曲Ⅲ「僕らのインベンション/宮川彬良」の解説を掲載します。

 

次回もぜひご覧ください!

 

 

 

 

 

荻原明(おぎわらあきら)

© 2017 AKIRA Ogiwara

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